Special Race Report
R2-1 全日本ロードレース選手権第7戦
GP250クラス 鈴鹿

決勝日 編集部リポート2
第6戦のSUGOでは、長いインターバルが明けて各チームの後半戦の戦いを占う意味で、マシンの仕上がりに注目が集まった。GP250では、F.C.C. TSRのAC28Mがかなりの戦闘力を上げて来ており、ワークスの2台の牙城を崩さんばかりの勢いを感じさせる。YAMAHA YZRも熟成されたバランスの良いマシンの挙動により、松戸は自由度の高いライディングを見せている。ライダーとして好調な大治郎の駆るNSRも改良を繰り返し、着実な進化を遂げている。エンジンパワーではクラストップとなる車速を記録する。只、レースディスタンスを戦うためのフレキシブルなマシンの動きを求めるライダーに対し、今ひとつ呼吸が合わない。結局、嘉陽の転倒ノーポイントレースで松戸が第6戦を征し、大治郎は2位となった。が、未知のセッティングを試してコーナリングに苦労しての結果ということもあり悔しさは拭えなかった。「まだ、こんなもんじゃない」と自分に言い聞かせて先を見つめる目にもチャンピオンシップポイン上の厳しさが写る。
ワークスライダーとしての “プライド”を持って、自分のベストをぶつける。そうして気持ちが前に向かうのは、8耐で観せたパフォーマンスによる自信と評価によるところが大きいのかもしれない。

チームとして懸命にマシンのバージョンアップを図るスタッフ達にも、大治郎の気持ちは伝わっている。


予選が終了した後に、コースが乾いてきてスリックとカットスリックで悩んで結局カットスリックでピットを出たけど難しい判断だった?と大治郎に聞いてみた。「部分的に水が残っていて、コースコンディションが微妙だった。どちらでもラップタイムが変わらないと判断したから、カットを選択した。」と答え、「それに精神的なものもある」とも。即ち、考えられるリスクは最小限に止め、措かれた状況で転倒する事がシーズンを失うことになり兼ねないことを意識している。


決勝日、入場者数 20,000人

午前に行われたウォームアップ走行では、事前テストとは違うセッティングで臨んだ。思い切ったセットの変更は好感触で、ピットに戻ることなく15分間の走行時間を有効に走り切った。走行後の大治郎の表情は明るく、決勝への手応えを感じさせる。
担当メカニックも、「事前テストからレースウィークまでの流れが良い感じで来ていて、晴れれば良い結果が望めるのではないかと期待している。」と話してくれた。



いつもより早く、SHOEIブースにヘルメットを受取にやって来た大治郎は、ライディングスーツに着替えると静かにピットへ。スタンバイされたNSRを見つめる目が涼しげで、その表情からは気負いは感じられない。「とにかくやるだけ」という大治郎の声が頭の中で甦る。コースオープンまで後僅か。いつもより言葉数が少ないチームクルーの表情が幾分硬い。メカニックから「緊張している。何かイケそうな空気を感じて…」という言葉が。ピット前の雰囲気に気持ちが昂ぶる。嗚呼…


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