オランダといえば、一面に咲くチューリップ、ゴーダやエダムといった丸くて大きなチーズ、そして風車。そんな一般的なイメージ以上にレース関係者には天気が印象に焼きついている。毎年悩まされ続けている“気まぐれダッチウェザー”は、突然の雨でそれまで施していたマシンセッテイングを台無しにして、ライダーの走りを混乱させ続ける。しかも、毎年の恒例となれば「運」をも見方につけなくては良い成績が残せないのか。 オランダの国土は九州とほぼ同じ面積で、ほぼ全域が海抜100m以下、その1/3が海面下という平坦さである。年間降雨量は少なく平均で800mm程度、にもかかわらず年間降雨日は何と200日もある。日本の年間降水量が1600mm、年間降雨日は114日ということからしても、いつ気まぐれに雨が降ってくるか分からない空模様とういのが数字でも表されている。誰が呼んだか“ダッチウェザー”比類なき気まぐれ天気はレースの歴史にもふドラマと不思議をもたらしている。今年のコース改修がなされるまで、コースレコードは10年間も更新されていなかった。1991年6月29日WGP第9戦オランダGPでの壮絶な展開の中で逆転優勝を決めた伝説のライダー、ケビン・シュワンツが記録した2分02秒443。これだけマシンの進化が著しく、ライダーのレベルも向上した現代で10年間という時間がどれだけラップタイムを縮めてきたかはグランプリの歴史が証明している。ただし、アッセンを除いて・・・。各サーキットのコースレコードは、毎年のように塗り替えられているのになぜオランダだけ?コースの状況が不安定すぎて、データが次のレースに生かされないなど原因は色々考えられるが、年間シリーズの難しさを測る関所としてこの地、このサーキットが選ばれている気にさえなってしまう。 変革期の最高峰クラスにどのようなレース展開が待っているのか。決勝日を迎えた。 このレースから、FIMよりレギュレーションの変更が通達された。一つは、ドライ宣言のレース中に雨が降り、TOPの選手が手を挙げて赤旗となった場合、レースが2/3を消化していてもFIMにより協議され、レースの成立とするか再スタートとして2ヒートとするか決定される事(※レースが2/3未満の場合は2ヒート制)。そしてもう一つのルール変更は、各選手ともゴール後はクールダウンラップでコースを1周せずにショートカットしてピットレーンに戻って来ると言うもの。これは、今年のイタリアGP時のゴール後に観客がコースになだれ込み、ノリックの前に観客の集団が押し寄せ行く手を阻み、仕方なくマシンを停めたノリックのヘルメットを奪う、マシンを倒すはの暴挙に危険を感じざるを得ないと判断。同じく宇川も危うく観客をひきそうになるのを避け、興奮した観客にマシンをなぎ倒され手首を押さえて、仕方なく歩いてピットに戻って来たという。「今回はレース後に非常に不快で危険な思いをした。このままではいつか大きな事故が発生するかもしれない。サーキット関係者には、ぜひとも何らかの対策をお願いしたい。現状のままではとても危険です。」と会見で述べた宇川に、ジャーナリストや関係者は拍手を送ったという。勝者のウィニングランが観られないのは残念ではあるが、興奮したとはいえ、まだかなりな速度でマシンに乗っているライダーに集団で立ちふさがる行為は危険極まりないし、一歩間違えれば選手のケガなどスポーツの意味を壊しかねないのだから、問われるモラルに観る側も応えてもらいたい。 |
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そぼ降る雨がサーキットに傘の華を咲かせている。午前のフリー走行は、ウェットでの20分間となった。遠くの空に明るさが覗く。午後は晴れるのか。路面が濡れるとジベルノーが好調さをアピール。このセッションTOPの2分12秒715をマーク。チェカが0.216差で続き、バロスはコンデイションに関係なく好調で3番手。ジャックも雨でジャンプアップの4番手。宇川、ロッシ、ビアッジ・・・続く。セッテイングが決まらず大治郎は13番手。 125ccクラス決勝がゴールを迎える頃から雲行きが怪しくなり始め、一転俄かに経ちこめる雨雲。ポツリポツリと降り始めたのは250ccクラスのスタート前だった。ウェット宣言が出されたものの、スタート直前に各チームともタイヤをスリックに履きかえる判断のコースコンディション。結局ドライのレースでmotoGPクラス決勝へバトンをつなぐ。 サッカーのワールドカップ3位決定戦とのバッティングを避け、スタート時間が15:30とされたオランダGP・motoGPクラスの決勝。 好スタートを切ったロバーツがレースをリード。7台のマシンがTOP集団を形成してレースが展開。バロスがハイペースで集団を抜け、TOPに立つとカピロッシが4周目に転倒による離脱。その後、バロスとロッシがマッチレースの様相を呈し、これに宇川、ビアッジ、チェカらが続く。延々とペースメーカーとしてのバロスを追従するロッシ。興味はいつ仕掛けるのか?といういつもの展開にあっけなく終止符を打ったのは、残り4周の時点。バロスを交わしてTOPに立ったロッシはペースを上げて今期6勝目(5連勝)を挙げ、早くもチャンピオン街道まっしぐら。バロスの健闘は光るものの、強すぎるロッシに成す術無しの声も。「2スト勢の4ストへのスイッチが待たれる。」との声がプレスセンターでも多く聞かれる状況だ。3番手争いは最終ラップの最終シケインで先行するチェカと追走する宇川が接触。2台ともコースアウトしてしまうが、チェカは体勢を立て直してそのままフィニッシュラインへ。宇川は惜しくも転倒し、再スタートを切ったが5位でのフィニッシュとなった。 今回の大治郎は、「言い訳はしたくないが、セッテイングが決まらずあれで精一杯だった。」と言葉少なく語ったとおり、ポジションは上げていったものの12番手でのフィニッシュとなった。日頃訴えない、太ももの張りがこのレースのラィデイングの大変さを物語った。曲がらないマシンをねじ伏せてのライデイングが無理を強いたのだ。しかし、貴重な4ポイントを獲得した。 チームは雨のレースも十分考えられるとの想定で、少しでも大治郎の力になりたいと、決勝日前日の深夜までタイヤ交換の練習を行なっていた。サーキットにただ1チームだけが、必死に1秒を削ろうとマシンに向かった。 全てに良い結果が出るわけではない。しかし、その過程で出来得る最大の努力を全員がしている限り、“その栄光の瞬間”は必ずやって来る。 レース終了後ホンダ関連のパーティーに招かれた大治郎は、オランダ名物の木靴をプレゼントされた。この靴には大治郎スペシャルとして74のゼッケンが入っていた。この会場でも大人気の大治郎はグランプリライダーらしくファンサービスに努めていた。 来週には、ゼッケン「74」の由来となっている7月4日。大治郎の誕生日がやって来る。26歳。積み重ねた時間をライダーとしての誇りに、また新たな1年を大きく羽ばたいて欲しい。 |
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決勝 結果 |